では入れ歯とは、どんな治療方法なのでしょうか。
専門的なお話になると、非常に奥深く、一般の方では理解に苦しまれてしまう可能性があるかと思いますので、ここでは、患者さんが分かりやすいことを第一目的とした文章で説明をさせていただきます。
では先ほどのフローに戻りましょう。
ブリッジによる虫歯や歯周病が原因で、右下(本人から見て)の奥計3本が失われた状態です。
そのため、その部分に何らかの処置を行い歯の機能を回復する必要があります。
しかし、向こう岸に支えとなる歯がないため、ブリッジでの修復はできません。
なぜ向こう側に歯が必要なのかというと、以前もご説明したように、人工の歯には上の歯から受ける大きな噛む力を受け止められるだけの支えが必要になるからです。
向こう岸には歯がないけれど上の歯がある以上、それを受け止めるものを作る必要があります。
そこで作られるのが入れ歯です。
ではブリッジと違い、支えとなる歯が片方無い状態の入れ歯は、どこで噛む力を支えるのでしょうか?
答えは歯グキです!
入れ歯は、歯グキに支えを求めるため、人工の歯だけではなく、その周りにプラスチック製の人工の歯グキのようなものを付ける必要があります。
そして手前の歯にワイヤー状の留め金をつけてひっかけ、入れ歯がはずれないようにします。
ただし留め金は、はずれないようにするための役割が主で、噛む力を支える役割はほとんどありません。
そのため、歯グキで噛む力を負担することになるのですが、やわらかい歯グキでは、小さな面積ではとても支えにならないため、なるべく大きな面積に支えを求めなければいけません。
そのため、人工の歯の下に、ピンク色の人工の歯グキのようなものを付けて面積を大きくします。
すると、図のように非常に大きな物がお口の中に入ることになります。
ただしこちらは、見た目は歯グキのように見えますが、素材は硬くて厚いプラスチックです。
そのため、装着すると大きな異物感がお口の中を支配するようになります。
また、入れ歯の部位によっては発音障害を引き起こす(舌が引っかかるため)こともあります。
そして、支えてくれる部分は、固い歯でなく、やわらかい歯グキということになります。
そのため、入れ歯は従来の歯に比べ20~30%の力でしか物を噛むことができないと言われています(食べ物を歯グキで噛むようなものです)。
ただ、患者さんによっては異物感に慣れてしまう場合もありますし、喋る時の発音も気にならない程度まで減少することもあります(入れ歯の大きさにもよります)。
しかし、それよりも本質的な問題は、噛んだ時に入れ歯が沈み、その際に金具をかけている手前の歯が後ろに引っ張られるなどして大きな負担がかかることです。
それにより留め金のかかった歯の寿命が大きく低下する可能性が高く、前述した歯の崩壊の連鎖の原因になります。
では入れ歯を入れた後の状況を見ていきましょう。
※図は、年齢ごとのお口全体の様子を示しているので、入れ歯と関係のない説明(向かって右側のブリッジなど)も記載しています。
分かりにくければ、最初は入れ歯の部分の説明だけをお読みいただき、その後再度お読みいただいたときに、お口全体の様子をつかんでいただければと思います。
このように、連鎖的に歯が崩壊していく可能性が高くなります。